
23 10月 スペインの株主間契約で防げる株主間トラブルとは
株主間契約を締結することで、放置すれば会社の運営に支障をきたしかねない問題をあらかじめ想定し、備えておくことができます。株主間紛争に関する前回の記事では、明確なルールがないと、意見の対立が生じた後にその解決がいかに難しくなるかをご説明しました。
会社を設立する時点では、株主は通常、目標を共有し、事業について共通のビジョンを持っています。しかし、状況は変わり得るものです。たとえば、一方の株主は利益を再投資したいと考え、もう一方は分配を望むことがあります。また、一方が多くの責任を担うようになる一方で、もう一方が徐々に関与を減らしていくこともあります。こうした状況は、必ずしも株主間の関係が悪化していることを意味するわけではありません。しかし、その解決方法を事前に取り決めないまま対処しなければならない場合には、問題が生じます。
株主間契約で何を定めることができるか
役割、関与の程度および報酬
多くの会社では、株主は資本を拠出するだけでなく、自ら事業に従事しています。たとえば、2名の株主がそれぞれ50%ずつ出資して会社を設立し、当初の数年間は同様の条件で業務に携わっていたとします。やがて一方が責任の大部分を担うようになり、もう一方は関与を減らしていきますが、両者の持分比率は変わらないままです。
事前のルールがなければ、報酬、利益の分配、あるいは経営上の判断をめぐって意見の相違が生じるおそれがあります。
これを防ぐため、株主間契約では、各株主の役割と関与の程度を定め、労務に対する報酬と配当とを区別し、利益を分配するか再投資するかの基準を設けることができます。また、合意した義務に違反した場合の効果を定めておくことも可能です。
これにより、業務負担をめぐる意見の相違が、会社の所有や支配をめぐる紛争へと発展することを防ぐことができます。
デッドロック解消の仕組み:株主間で合意に至らない場合
ここでも、2名の株主がそれぞれ50%を保有する会社を例に考えてみましょう。一方は利益を再投資して事業を拡大すべき時期が来たと考え、もう一方は利益の分配を望んでいます。何度協議を重ねてもどちらも譲らず、その対立が他の重要な意思決定にまで波及すれば、会社は機能不全に陥りかねません。
こうした事態に備え、株主間契約では、一定の投資、新たな株主の加入、重要な資産の売却など、特別の合意を要する事項を定めることができます。
また、対立を解消するための手続として、一定期間内での協議、調停、さらには独立した専門家の関与などを定めることもできます。
それでも膠着状態が続く場合に備えて、持分の買取りまたは売却の仕組みや、事業の継続を可能にするその他の解決策を定めておくことができます。
これらの条項では、手続がどのように開始されるのかを具体的に定める必要があります。株主が誠実に協議する旨を定めるだけでは不十分です。あわせて、適用される期限や、合意に至らなかった場合にどうなるのかも定めておかなければなりません。また、全員一致を要する事項を多くしすぎないことも重要です。当初は保護策として設けたものが、会社の通常の経営の妨げとなるおそれがあるためです。

株主の離脱:事業から抜けたい株主がいる場合
創業株主の離脱は、特にその株主が代替の難しい役割を担っている場合、事業の継続に影響を及ぼすおそれがあります。後任の手配に加え、その株主の持分をどう扱うかも決める必要があります。
グッドリーバー条項およびバッドリーバー条項を設けることで、離脱の理由を区別し、それぞれに異なる効果を定めることができます。グッドリーバーとは、株主間契約が正当とみなす事由によって離脱する株主をいいます。一方、バッドリーバーとは、在籍義務その他の定められた条件に違反して離脱する株主などをいいます。
これらの区分は、株主間契約の中で具体的に定める必要があります。スペイン法には、あらゆる会社に自動的に適用される統一的な制度は存在しないためです。
株主間契約では、誰が持分を取得できるのか、その価格をどのように算定するのか、評価額について争いがある場合にどうするのか、そしてどの期間内に譲渡を行うのかを定めることができます。
離脱が生じる前に備えておくことで、不確実性が軽減され、株主構成が変わっても会社が事業を継続しやすくなります。これらの仕組みについては、当事務所のこちらの記事で詳しくご紹介しています。
持分の譲渡:誰が会社に加わることができるか
問題が、誰が会社に加入できるかという点にある場合もあります。たとえば、ある株主が自らの持分について買取りの申出を受け、第三者に売却したいと考える一方で、他の株主は競合他社の参入を避けたい、あるいは自らその持分を取得する機会を得たいと考えることがあります。
株主間契約では、優先買取権その他の譲渡に関する取決めによって、こうした状況に対応することができます。
また、会社全体の買収を希望する買い手が現れたものの、株主の一人が売却を望まないというケースも考えられます。このような場合には、次の二つの仕組みが有効です。
- タグ・アロング権(共同売却権)とは、ある株主が他の株主による売却に加わり、自らの持分も買い手に譲渡することを可能にする権利です。
- ドラッグ・アロング権(強制売却権)とは、他の株主にも持分の売却を求め、一括での売却を実現することを可能にする権利です。
これらの仕組みが機能するためには、行使の条件、必要な持分割合、価格および期限を定めておく必要があります。条項を正確に作成しておくことで、個々の持分譲渡が重要な取引を妨げたり、株主が想定外の立場に置かれたりする事態を防ぐことができます。
株主間契約と定款:なぜ両者の整合が必要なのか
スペイン会社法上、株主間契約を締結したからといって、そのすべての条項が当然に会社に対抗できるわけではありません。スペイン資本会社法第29条(Ley de Sociedades de Capital)は、株主間で非公開とされた合意は会社に対抗できないと定めています。
そのため、契約の当事者が負う義務と、求める効果に照らして適切な場合には定款にも盛り込むべきルールとを区別する必要があります。両者をあわせて検討することで、矛盾を避け、各条項が本来の目的に沿っているかを確認することができます。
株主間契約と定款の関係については、こちらの記事(英語)で詳しくご説明しています。
各社の実情に応じた助言
あらゆる会社に通用する株主間契約のひな形は存在しません。創業者2名がそれぞれ50%を保有する会社と、同族会社や投資家を受け入れる会社とでは、必要とされる内容が異なります。
契約書を作成する前に、会社の組織体制、各株主の期待、そして将来的に問題となり得る意思決定について分析しておくことが望ましいといえます。
ナバロ・ジマ法律事務所は、20年を超える経験を有し、企業における株主間の関係の整備や、株主間紛争の予防と解決について助言を行ってまいりました。既存の株主間契約の見直しや、貴社におけるこうしたルールの導入をご検討の際は、info@navarrollimaabogados.com までお気軽にお問い合わせください。

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